店舗運営に必要な財務的視点

ゼロ円起業の中村です。

 

私は約10年間、調理系の専門学校の非常勤講師をしてました。

 

教えていたのは「店舗経営」の座学。

 

この中で、独立開業希望者は毎年クラスの1/3~1/4ほどいたのですが、その生徒に好評だったのがこの「店舗運営に必要な財務的視点」です。

 

その際、このような問題を出していました。

 

以下のような収益構造の居酒屋がある。
売上:   100万円
変動費:  20万円
粗利益:  80万円
固定費:  60万円
(うち人件費  20万円)
(営業)利益  20万円
客数: 250名
※数字はすべて1ヶ月(30日)の数字

 

【問題1】

紙1枚(5円)を無駄に使ってしまった場合、(営業)利益を減らさないためには、月間売上をいくら増やせばよいか?(※ただし、紙代以外の固定費は増えないものとする)

 

【問題2】

このお店では1日当たり何人目から利益となるか?  

 

すぐに答えが出る方は経営を数字で見るのが得意かもしれません。

 

あっ、ちなみに、【問題1】の答えは【5円】ではありません。

店舗の収益構造

 

当時は、上の図を使って収益構造を伝えていました。

(※個人事業主を例に出しているので法人だと「利益」⇒「営業利益」です)

 

売上はお店に入ってきた段階で大きく3つに振り分けられる。

「変動費」「固定費」「利益」

 

「売上」から「変動費」を引いた額が「粗利益」

収益構造の絶対ルール

1.売上高=変動費+粗利益 の合計額と必ず一致する

2.粗利益=固定費+利益 の合計額と必ず一致する

3.売上高=変動費+固定費+利益 の合計額と必ず一致する

粗利率の計算式

粗利率=粗利益÷売上

 

この関係を理解すると【問題1】は答えられます。

売上はいくら上げれば良い?

以下のような収益構造の居酒屋がある。
売上:   100万円
変動費:  20万円
粗利益:  80万円
固定費:  60万円
(うち人件費  20万円)
(営業)利益  20万円
客数: 250名
※数字はすべて1ヶ月(30日)の数字

 

【問題1】

紙1枚(5円)を無駄に使ってしまった場合、(営業)利益を減らさないためには、月間売上をいくら増やせばよいか?(※ただし、紙代以外の固定費は増えないものとする)

 

今、紙1枚(5円)を無駄に使ってしまいました。

 

この紙代は「固定費」です。

 

つまり、固定費を5円余計に使ってしまったという状態です。

 

先程の『収益構造の絶対ルール』の2.で、

 

粗利益=固定費+利益

 

とありました。

 

今の状況をこれに当てはめると、

 

粗利益=5円+利益(±0)

 

つまり、粗利益が5円増えれば利益を減らさずに済むということです。

 

では、粗利益が5円増えたときの売上はいくらになるか?

 

 

このお店の粗利率(売上に占める粗利益の割合)は先程書いた式に当てはめると、

 

80万円÷100万円=0.8(80%)

 

整理すると、

・このお店の粗利率は80%

・粗利益が5円増えたときの売上を求める

 

ここで改めて粗利率の計算式を使います。

 

粗利率=粗利益÷売上

売上=粗利益÷粗利率

 

これに数字を当てはめていくと・・・

 

売上=粗利益(5円)÷粗利率(80%)

  =6.25円

 

紙1枚5円を無駄に使ってしまった場合、売上を【6.25円】円増やすと利益を減らさずに済むということです。

 

『費用で使った分と同じ金額だけ売上を上げればいいんじゃないの?』

 

という質問もよくありました。

 

実際に計算してみるとわかります。

 

例えば、無駄に使った分と同額の売上を5円増やしたとしましょう。

 

その際、粗利益がいくらになるかというと、

 

粗利益=売上(5円)×粗利率(80%)

   =4円

 

粗利益は4円しかありません。

 

これだと、紙代5円を差し引くと、利益が1円減ってしまいますよね。

 

なぜこうなるかというと、変動費を考慮してないからです。

 

変動費は売上の上下に比例して動く費用です。

 

なので、売上が上がれば変動費も増え、売上が下がれば変動費も下がります。

 

粗利率100%のビジネスであれば、使った分の固定費と同額の売上を上げれば利益は減らさずに済みますが、それ以外の場合にはこの変動費を考慮する必要があります。

 

ちなみに、この考え方は色々と応用可能です。

 

例えば、広告宣伝費で10万円使った場合、利益を増やすためにはいくら売上が必要かも同じ計算式で出せますし、人件費も同様です。

 

なので、広告の費用対効果を検証する際、

 

「広告費分は売上確保できたから効果があったよ」

 

は大きな間違いです。

 

もしそんな事を言う人が周りにいたら教えてあげてください。

 

『それだと、利益は減ってますよ~!』

1日あたり何人目から利益が出る?

以下のような収益構造の居酒屋がある。
売上:   100万円
変動費:  20万円
粗利益:  80万円
固定費:  60万円
(うち人件費  20万円)
(営業)利益  20万円
客数: 250名
※数字はすべて1ヶ月(30日)の数字

 

【問題2】

このお店では1日当たり何人目から利益となるか?

 

これは以前「売上とエビフライ」という記事の中でも解説した下記計算式で出すことができます。

 

1日あたり固定費÷1客あたり平均粗利益

=1日あたり損益分岐点客数

 

このお店でいうと、

 

●1日あたり固定費=60万円÷30日= 20,000円

●1客あたり平均粗利益=80万円÷250名= 3,200円

 

ですので、

 

1日当り損益分岐点客数=

20,000円÷3,200円= 6.25名

 

つまり、このお店は1日当り

 

【7名以上】

 

来店すれば利益がでるということです。

まとめ「数字が苦手は通用しない」

自分で経営する以上、こういった数字で物事を判断する能力は必須です。

 

「私、数字がどうも苦手で・・・」

 

は通用しないんですよね。。。

 

切っても切り離せない数字を早いうちから克服するため一番手っ取り早いのは、自分自身で経理をすることです。

 

毎月1回、

・領収書の整理や売上の管理

・どこにいくら支払っているのか?

・どれくらい利益が出ているのか?

・今月は客数と客単価はいくらくらいになっているのか?

・使った広告費に対して何人のお客様が来て、どれくらいの【利益】が出たのか?

などなど

 

最初は大変かもしれませんがこれは慣れるしかありません。

 

こういうことをやっていると、いつの間にか数字に強くなっているはずです。

 

ぜひ試してみてください。