ゼロ円起業の中村です。
自分のお店を持って業績が向上してくると2店舗目3店舗目を考えるのは自然の流れです。
ただ、勢いで多店舗展開をして苦労する人はたくさんいます。
今日はそのあたりの話です。
そもそも1店舗だけで考えているなら独立はしない方がいい
私が相談を受ける際、「1店舗だけしかやらないなら辞めたほうがいい」と伝えています。
なぜか?
飲食店だろうが、美容室だろうが、どの業種でも1店舗だけだと利益も知れています。例えば、飲食店であれば平均的な営業利益率は7-8%ほど、美容室であれば10%ほどです。
つまり、月商300万円の飲食店であれば平均して手元に残る利益は約21-24万円ほど。美容室だと30万円ほどです。まれに1店舗だけで爆発的な利益を出すお店もありますがそれは本当に稀です。
毎月生きていくくらいは稼げても将来、特に老後の生活費まで考えるととてもじゃないが1店舗だけだと全然足りません。老後にどれくらいの費用がかかるかご存知でしょうか?
引退後、死ぬまでにかかる生活費
サラリーマン世帯は厚生年金があるのでいいとして、中小個人の店舗経営者はほとんどが「国民年金」です。国民年金は現在、制度上の上限が「毎月約65,000円」。
1ヶ月にたった65,000円です。しかもこれは今の話。
これが自分たちが引退する頃にはどんどん減って、月額40,000円台にしかならないという話も耳にします。老後の生活資金が2,000万円不足するという話題も、あれは厚生年金世帯の話。国民年金世帯は老後資金がもっと不足するんですね。
65歳で引退すると仮定すると、老後に夫婦2人で暮らすためには7,000万円~8,000万円必要と言われています。その一部を年金で賄うわけですが、国民年金はたかが知れています。
1店舗だけをやっていて、果たして65歳までに数千万円の貯金ができるか?かなりハードルが高いですね。だとしたら、多店舗展開をして自分の稼ぎを増やすか、自分が働かなくても収入が入ってくる仕組みを作るかしかありません。
とは言え、勢いで多店舗展開をするとほぼ間違いなく苦労します。
多店舗展開時の落とし穴
新規出店時は新たな資金調達が必要
当たり前の話ですが、店舗出店にはお金がかかります。
飲食店や美容室など箱物であれば物件取得費や内装工事費、什器備品代などで安くても700〜800万円、場合によっては1,000万円超えも普通にあります。
会社に余剰金があったとしてもそれは万が一のための運転資金として残しておきたいので、新規出店時は新たな資金調達が必要です。
ただ、銀行も二つ返事で貸してくれるわけではありません。決算申告書類を見られ、直近のお店の数字も見られ、今後の事業計画も見られます。
特に数字が得意じゃないからと言って、会計を税理士に丸投げしているような経営者は要注意。新規借入をするにはそれなりの事前準備が不可欠です。
顧問税理士が資金調達にも長けている税理士であればいいですが、ほとんどがそうじゃないので結局事前準備不足でお金が借りられないということも多々あります。
ちょっとの油断が命取り
前回の記事でも書いた通り、新たな資金調達をする際は代表者自身の与信情報も大きく影響してきます。
「うっかり個人口座に現金を入れ忘れてて、カード引き落としができなかった」
なんてことがあると、その情報は【遅れ】として与信情報に登録されます。たった1日の遅れでも情報は残ってしまうんです。そのちょっとした油断が影響して融資が受けられないという人を何人も見てきています。
人の成長が追いつかずブランド価値を下げてしまう
これもよくある話です。
新規出店できたとしても人の問題でダメになる。ちゃんと組織をマネジメントできる人間が育っていて、その上で多店舗展開するならいいですが、そうじゃないとかなり危険です。
ちなみに美容室とかでよくある「売上の高い人を新店舗の店長にする」というのはうまくいかないことが多いです。なぜなら「プレイヤー」と「マネージャー」は別物だから。
どんなにプレイヤーとして活躍した人でも、その人がマネジメントにも長けているかというとそうではありません。
「名選手、名将にあらず」
バイトテロなどまさにそれで、どんなに有名な一部上場企業のお店でも現場のマネジメントがしっかりできていないとあのような問題が起こってしまうんです。
結果、ブランド価値を大きく下げて売上が伸びず閉店に追い込まれる。そして借金だけが残るという最悪なケースも十分考えられます。
多店舗展開するなら【カネ】と【ヒト】の問題を解決する
多店舗展開をするなら【カネ】と【ヒト】の問題を解決してから。
それだとスピード感がないという人もいます。確かにスピードは大切です。ただ、スピードを追い求めるあまり現場をおざなりにしていては結局お客様に迷惑がかかることになります。
そして余計な苦労がどんどん溢れてきます。だったら、スピード感は薄れるかもしれないけど、着実に出店を重ねていったほうが長い目で見て結局はいい方向に向かう。
私はそう考えています。
ヒトとカネの問題を解決するためには
やっぱりそれぞれその道のプロに相談するのが一番早いです。
ただ、あくまで個人的な意見ですが世の中でコンサルと名乗っている人間の9割はいいかげんです(汗)私も一応、約10年間経営コンサルタントをしてきましたが、その中で同業者とたくさん会ってきたものの「この人は本物だ!」と思えた人は片手で収まる程度です。
そういうエセコンサルに騙されないよう、きちんと情報収集して周りの人にも相談して、本物のコンサルタントに相談してみることをオススメします。
そして、ヒトとカネの問題を解決できる道筋が見えてきたタイミングで多店舗展開を考えていくことをオススメします。